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入力部のナゾ抵抗

 エフェクターの回路をいろいろと眺めていると、 入力部のハイパス・フィルタのさらに外側に信号線とグラウンド線を 結ぶ抵抗を見つけることがあります。この抵抗は何のためにあるのかわからないので 「ナゾ抵抗」と呼ぶことにしますが、 とてつもない悪さをするわけではありません…。 入力インピーダンスを下げてしまうため「ロー出しハイ受け」に悪影響を及ぼしますが、 このナゾ抵抗自体の抵抗値が大きく設定されているので 深刻な問題になりません。
 ずっとその存在理由を考えてきたのですが、いまだにわかりません。 以下、その存在理由を考察します。
ナゾ抵抗01
図1.入力部の「ナゾ抵抗」
  1. 「自作エフェクター対策」
  2.  このエフェクターの前に自作エフェクターをつなぐ場合を考えてナゾ抵抗を入れているのかもしれません。 自作エフェクターでは、製作者がうっかり出力部の信号線をグラウンド・バイアスしないことがあるかもしれないという配慮から、 こちらのエフェクター側でナゾ抵抗を使ってグラウンドにバイアスしているのかもしれません。 また、XLR仕様のダイナミック・マイクの信号線はグラウンドから浮いていることが多いので、 設計者がギターなどでも信号線がグラウンドから浮いていると思ったのかもしれません。 それでナゾ抵抗で信号線をグラウンドにバイアスしたのかもしれません。
    ナゾ抵抗02
    図2.自作エフェクター対策
  3. 「ノイズ対策」
  4.  ケーブルのグラウンド線も信号線も少し抵抗値を持つので、 入力部でグラウンド線と信号線の間にノイズまみれの 電圧差が生じる可能性があります(もしも抵抗値が完璧にゼロならば電位差は生じないのですが…。)。 その対策として 入力部ナゾ抵抗を使って 信号線をグラウンド電圧に再バイアスしているのかもしれません。 ケーブルが長い場合は意味のあることですが、そこまで神経質になる必要があるのでしょうか…?
    ナゾ抵抗03
    図3.ノイズ対策
  5. 「意味なし」
  6.  エフェクター開発のパイオニアが特に考えもなく ナゾ抵抗を入れただけかもしれません。 後発の開発者はナゾゆえに省略する理由を見つけられず ナゾ抵抗を使い続けている…。 意味不明なものほど踏襲(とうしゅう)されやすいのは世の常です。
 上記のとおり、三つばかり考察をしてみましたが、どうもこじつけっぽくて良くありません。 エフェクター関連の文章を読むときナゾ抵抗の存在理由を 解き明かしているものはないかと注意しているのですが、 そもそも言及しているものすら見つけられません。
 実際のところ、ナゾ抵抗のないエフェクターも多いです。 私自身はナゾ抵抗はなくても良いと思っています。 しかし、ケーブルが長くなるときは、二番目の説を支持してナゾ抵抗を 採用してしまうかもです・・・。
 もしも存在理由をご存知でしたら、 入力フォームから教えて下さい!!!
 


2024年3月31日に次ようなメッセージをくださった方がいらっしゃいました!
これしか考えられないという内容です。大変に有益なので知識を共有したく そのまま掲載いたします。
どなたか存じませんが、ありがとうございます!!!長年の疑問が消えました!
2024年4月1日
        ↓↓↓
「当方、趣味でエフェクターの自作をやっています。
ナゾ抵抗ですが、一般的に1MΩ程度の高抵抗が入っているアレでしょうか? これはトゥルーバイパス(機械的スイッチ)の場合のポップアップノイズ対策という理解です。
入力インピーダンスを下げないために高抵抗が使われます。
ちなみにトゥルーバイパスではないBOSSのエフェクターなど電子スイッチのエフェクターでは、 この抵抗は入っていないと思います。」

 メッセージがわかりやすく、これ以上なにも加える必要はないのですが、 私(荻窪のおっちゃん)の出番を作るためにメッセージを図説してみたいと思います。
 「トゥルーバイパス(機械的スイッチ)」式のエフェクターは次の図A及び図Bのようになっています。 図Aがエフェクト・オンの状態で、図Bがエフェクト・オフの状態です。抵抗R2及びキャパシタC1でハイパス・フィルタを形成しています。 抵抗R1はナゾ抵抗です。
 図Aのエフェクト・オンのとき、入力信号はエフェクター回路のみに入り、エフェクター回路で加工されて出力されます。 入力信号はトゥルー・バイパス・ラインには入力されません。
 図Bのエフェクト・オフのとき、入力信号はエフェクター回路に入らず、トゥルー・バイパス・ラインのみにに入力されます。 入力信号はトゥルー・バイパス・ラインを経て加工されることなく出力されます。 このときもしもナゾ抵抗R1が存在しなかったらどうなるでしょうか? 図Cはナゾ抵抗R1のないスイッチ・オフ状態です。 このときエフェクト・ライン上の「不定区間」と書いた箇所の電位は、電位的に孤立してしまうこととキャパシタC1の放電でGND電位に対して不定になります。そしてスイッチをオンするとGND電位基準に戻るのですが、 その際にキャパシタC1に電流が流れて、ノイズが発生します。 ナゾ抵抗R1があれば、スイッチ・オフでもエフェクター回路の入力部に不定電位を生じさせず、 スイッチ・オンになった瞬間でもキャパシタC1に電流が流れないでノイズが起きません。
 電子スイッチのエフェクターは、スイッチのオン、オフのときそもそも入力部での切り替えはしないので、このような問題が起きず、 ナゾ抵抗は不要です。
機械的スイッチ_オン
図A.エフェクト・オン
 
機械的スイッチ_オフ
図B.エフェクト・オフ
 
機械的スイッチ_オフ_ナゾ抵抗なし
図C.ナゾ抵抗R1なしでのエフェクト・オフ

なお、第二章の「エフェクターのオン・オフ切り替え」にこの記事と関連する記載があります。

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