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入力部のオペアンプ回路5態

 
 パッシブタイプのエレキ・ギターの出力インピーダンスを図1に示します。平坦な部分は全くなくイビツな形をしています。 このようなイビツさに対応可能な 入力部のオペアンプ回路を5つ示します。
 なお、図中の"V_bias"はバイアス電圧です。両電源式ならGND電圧で、方電源式ならば電源電圧の半分の電圧です。

ギターの出力インピーダンス特性
図1.ギターの出力インピーダンス特性

<第1の回路>
第1の回路
図2.第1の回路
 第1の回路を図2に示します。 パッシブタイプのギターやベースのイビツな出力インピーダンス特性を抑制するため 大きい抵抗R1を選定すると抵抗R2がそれ以上に大きくなり オペアンプが発振してしまう危険性があります。発振するときは 抵抗R2と並列にキャパシタを挿入する必要があり、少し面倒な回路ですね。 そんなわけでギターやベース用の入力部では、ほとんど見かけないです。
 しかし、キーボードのように出力インピーダンスがフラットで素直な楽器に対しては 抵抗R1を大きくする必要がないゆえに抵抗R2もそれほど大きくする必要がなく、 普通に使える回路です。 増幅率は下のとおりです。
   増幅率=-r2/R1・・・(1)
   r2は可変抵抗R2の端子1と2の間の抵抗値

 

<第2の回路>
第2の回路
図3.第2の回路
 第2の回路を図3に示します。 大きな抵抗値を持つ抵抗R1を選定できるので入力インピーダンスを大きくすることができ、 パッシブタイプのギターやベースのイビツさを抑制できます(端的に言えば「ハイ落ち」を抑制できます。)。
 しかし、増幅率が下の式(2)のようになり、増幅率を1よりも小さくできず音量を0にできない欠点を持ちます。
   増幅率=1+r3/R2・・・(2)
   r3は可変抵抗R3の端子1と2の間の抵抗値

 

<第3の回路>
第3の回路
図4.第3の回路
 第3の回路を図4に示します。可変抵抗の位置が異なるだけで第2の回路とほとんど同じです。 長所や欠点も同じですが、式(3)にあるように音量パラメータの変数部r3が分母にくるゆえに 音量調節が少し面倒かもしれません。
   増幅率=1+R3/r2・・・(3)
   r2は可変抵抗R2の端子2と3の間の抵抗値

 

<第4の回路>
第4の回路
図5.第4の回路
 第4の回路を図5に示します。 第2及び3の回路と同様に、大きな抵抗値を持つ抵抗R1を選定できるので入力インピーダンスを大きくすることができ、 パッシブタイプのギターやベースのイビツさを抑制できます。
 しかも、増幅率が下の式(4)のようになり、増幅率を1よりも小さくできて音量を0にすることも可能です。 さらに、入力信号が電源電圧を超える場合でも可変抵抗R1の音量を絞れば対応できます。とても優れた回路なので、 ギターやベース用のエフェクターやアンプで最もよく使用される入力部回路だと思います。
 増幅率は下の式(4)のようになります。
   増幅率=(r1/R1)(1+R3/R2)・・・(4)
   r1は可変抵抗R1の端子1と2の間の抵抗値

 

<第5の回路>
第5の回路
図6.第5の回路
 第5の回路を図6に示します。これは第3の回路の発展形と言えるものです。
 第2〜4の回路と同様に、大きな抵抗値を持つ抵抗R1を選定できるので入力インピーダンスを大きくすることができ パッシブタイプのギターやベースのイビツさを抑制できます。
 しかも、第4の回路と同様に、増幅率を1よりも小さくできて音量を0にすることも可能です。 出力インピーダンスが少し高くなる欠点があります。
 抵抗r2と音量の関係を図7に示します。少しクセのある曲線ですが端部以外はわりと直線ぽいです( R2:50kΩ, R3:10kΩ, R4:100kΩ, R5:10kΩ )。
   増幅率={r2/(R5+r2)}{1+R4/(R2-r2+R3)}・・・(5)
   r2は可変抵抗R2の端子2と3の間の抵抗値

抵抗値r2と音量
図7.第5の回路における抵抗値r2と音量の関係
 
 

公開日 2025年2月1日
荻窪のおっちゃん
 

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